2026/4/20 加藤貴之
背景
生野中学校の10年後の全校生徒数は30人を割り込む見通しだ。そのような中で私は、生野小学校との小中一貫校化や、朝来中学校との合併を検討すべきではないかという声を保護者からちらほら聞く。私自身も合併したほうが良いのでは思っている。そのようなことを地域で考えるうえでの基礎資料として今回整理をしたいと思う。
調査の範囲
朝来市立生野中学校の将来像に絞って調査を行う。次節で述べるが、朝来市では学校のあり方の議論は地域からの声に基づいて行われるものと方針が示されている。したがって学校のあり方の一般的な原理原則を打ち立てることを目的とはせず、あくまで生野中学校を対象とし、生野地域における議論の土台とすることを目的とする。
また、小学校や高校のあり方については調査をしない。まず、生野小学校は無くてもよいという声を私は聞いていない。私自身もそう思っていない。「学校は地域コミュニティの核である」という言説は無批判に受け入れるべきではないが、それなりに妥当性があることだと僕は思っている。また私は、中学校には小規模であることの良さはあまりないと思うが、小学校は小規模であることの良さがあると思っている。
生野高校についてはそのあり方が議論されるべきだと思うが、私自身が市議会議員である点と、私の子供がまだ小学2年と4年である点から、その議論にあまりリアリティを持てないので、ひとまず外から関心を持つこととする。
学校のあり方についての方針
学校のあり方を考える最も基礎的な資料は「朝来市立学校の在り方に関する方針」である。2021(R3)年5月に朝来市教育委員会が作成している。これのポイントは3点ある。
①理想的な学校規模
1点目は学校の生徒数についての基本的な考え方。
中学校においては、体力的、精神的に大きく成長する時期であることから、社会性や自立心を培うために、ある程度の集団の中で多様な人間関係を経験すべきであり、クラス替えが可能となる学校規模(25人/学級×2学級×3学年=150人以上)を理想とします。
ただし、資料作成時点で、和田山中以外はこの理想に届いていない、もしくは届くことは厳しい状況であるので、小規模校においても最大限に教育効果が発揮できるような方策を考えると述べている。
②保護者アンケート結果
2点目は保護者アンケート。R2/3に朝来市内の児童生徒の全保護者(1,752)を対象にアンケートを実施。1,267件の回答を取得。「児童・生徒数が今後さらに減少した場合、どのようにすることが望ましいか」という問いに対して、生野校区では52.6%が「学校を統合し、適正な生徒数を確保すべき」と回答している。

③検討の進め方
理想的な学校規模に届かない場合でも、様々な施策により教育委員会は教育の質が落ちないように配慮する。しかしそれでも小規模化がさらに進展する場合は、以下の手順で新たな学校づくりも含めた検討を行う。
- 地域から学校統合等に関する意見・要望を受ける
- 該当する校区の保護者や住民の方々との意見交流会を開催する。その中で以下の三者の声を集約する:
- 保護者・地域住民・・・学校統合等に関する意見・要望
- 地域・地域の学校支援組織・・・教育上の課題やまちづくりも含めた将来ビジョンを共有
- 教育委員会・学校・・・教育現場の現状等を丁寧に説明
- 新たな学校づくりの計画を検討委員会(仮称)を設けて進めていく
つまり、学校のあり方の検討のきっかけは、あくまでも地域の声であって、教育委員会主導ではないというのが原則ということである。したがって必要であれば地域から声を上げることになる。
中学校生徒数の将来推計
様々な方が推計をしていると思うが、私独自に推計したのが下図である。

方法は単純である。まず、旧町ごとの年度ごとの出生数を得る。これは議会の市民課の決算資料に毎年示されている。データは以下の通り。
| 出生数 | H20 | H21 | H22 | H23 | H24 | H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 | R6 |
| 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | |
| 生野 | 19 | 21 | 19 | 24 | 20 | 17 | 16 | 19 | 24 | 20 | 14 | 10 | 15 | 9 | 7 | 11 | 6 |
| 和田山 | 132 | 142 | 169 | 150 | 147 | 143 | 152 | 124 | 150 | 134 | 121 | 113 | 118 | 106 | 81 | 81 | 79 |
| 山東 | 21 | 31 | 38 | 51 | 38 | 36 | 46 | 30 | 39 | 35 | 31 | 26 | 29 | 28 | 32 | 22 | 20 |
| 朝来 | 33 | 46 | 42 | 43 | 36 | 32 | 34 | 25 | 32 | 35 | 25 | 33 | 23 | 18 | 17 | 14 | 13 |
これを基に「生野町の出生者が100%、生野中学校に入学する」(他の3町も同様)と仮定して、各年度の中学校の生徒数を推計する。例えば2026年度の中学1年生は2013年度の出生者、2年生は2012年度の出生者、3年生は2011年度の出生者なので、17+20+24=61名と推測される。
この方法に誤差はないのか。実数を持っている2023年度、24年度、25年度について、実数と推測値を比較したのが下表。
| 2023 | 2024 | 2025 | |||||||
| R5 | R6 | R7 | |||||||
| 推測 | 実数 | 誤差 | 推測 | 実数 | 誤差 | 推測 | 実数 | 誤差 | |
| 生野 | 59 | 52 | +12% | 64 | 56 | -13% | 63 | 56 | -11% |
| 和田山 | 443 | 365 | -18% | 461 | 368 | -20% | 466 | 406 | -13% |
| 山東 | 90 | 124 | +38% | 120 | 148 | +23% | 127 | 135 | +6% |
| 朝来 | 121 | 127 | +5% | 131 | 131 | 0% | 121 | 131 | +8% |
このように、生野と和田山は実数が下振れしている。山東と朝来は実数が上振れしている。自然減はほぼ0だし、私立に行く子も朝来市ではクラスに一人くらいだから、おそらく社会増減の影響が大きいだろう。人口流出を食い止めない限り、この推測よりも下回ることは大いにあり得る。逆に山東町のように人口流入があれば出生数以上の生徒数を獲得できる可能性がある。
朝来市の状況
学校の一覧
| 2025 生徒数 | 最寄校 | 最寄校距離 | 遠い地区例 | 遠い地区からの距離 | |
| 生野 | 56 | 朝来 | 10.7km | 竹原野 | 5.2km |
| 和田山 | 406 | 山東 | 4.1km | 久世田 | 7.4km |
| 梁瀬 | 135 | 山東 | 4.1km | 金浦 | 5.5km |
| 朝来 | 131 | 朝来 | 10.7km | 上岩津 | 5.8km |
ハード面の状況
朝来市学校施設等長寿命化計画による。
| 建築年度 | 劣化評価 | 改修年度 | 改修予定 | 改築予定 | |
| 生野 | 1977 | 51~68 | 2001 | 2027 | 2058 |
| 和田山 | 2013 | 93~100 | ー | 2040 | |
| 梁瀬 | 1978 | 81~93 | 2007 | 2033 | |
| 朝来 | 1964 | 75 | 1992 | – | 2048 |
学校再編事例
近年の状況は以下の通り
2005(H17)/4 生野小・栃原小 → 生野小
2009(H21)/4 生野小・奥銀谷小 → 生野小
2011(H23)/4 梁瀬小・与布土小・粟鹿小 → 梁瀬小
中学校に限って言うと、だいぶ古い話になる。
1956(S31)/4 和田山中・東河中 → 和田山中
1958(S33)/4 梁瀬中・粟鹿中 → 梁瀬中
1962(S37)/4 山口中・中川中 → 朝来中
1967(S42)/4 和田山中・糸井中・大蔵中・竹田中 → 和田山中
兵庫県内の事例
存続している小規模中学校
2025年度の全校生徒数が80名以下の学校の一覧。兵庫県教育委員会のデータから作成。
生野は県内で19番目に小さい中学校であり、へき地校等を除くと9番目に小さな学校である。さらに、へき地校等を除いて、現在のところ再編対象となっていない中学校で、生野よりも小規模な学校は播磨高原東と有年の2校のみである。
| No. | 状況 | 市町名 | 校名 | 生徒数 | 統合 目途 年度 | 最寄 (統合)校 | 最寄 (統合) 校距離 | 備考 |
| 1 | へき地等 | 姫路市 | 家島 | 18 | 坊勢 | – | 離島・へき地1級 | |
| 2 | へき地等 | 南あわじ市 | 沼島 | 20 | 南淡 | – | 離島・特認校・へき地2級 | |
| 3 | ★存続 | たつの市 | 播磨高原東 | 24 | 新宮 | 12 | ⭐︎2025存続方針 | |
| 4 | へき地等 | 香美町 | 小代 | 27 | 村岡 | 12 | へき地1級 | |
| 5 | へき地等 | 姫路市 | あかつき | 31 | 東光 | 1 | 夜間 | |
| 6 | 統合方針 | 洲本市 | 由良 | 33 | 2031 | 州浜 | 10 | 2031以降洲浜中へ統合方針 |
| 7 | へき地等 | 尼崎市 | 成良中琴城分校 | 35 | 成良 | 1 | 夜間 | |
| 8 | 統合方針 | 佐用町 | 三日月 | 35 | 佐用 | 10 | 1町1校化を検討 | |
| 9 | へき地等 | 宝塚市 | 西谷 | 37 | 五月台 | 12 | 特認校 | |
| 10 | 統合方針 | 洲本市 | 安乎 | 37 | 2029 | 州浜 | 8 | 2029頃洲浜中へ統合 |
| 11 | ★存続 | 赤穂市 | 有年 | 39 | 坂越 | 9 | ⭐︎R4再編しない方針 | |
| 12 | 統合方針 | 豊岡市 | 港 | 39 | 2028 | 城崎 | 4 | 2028統合計画中 |
| 13 | 統合方針 | 佐用町 | 上津 | 41 | 佐用 | 4 | 1町1校化を検討 | |
| 14 | へき地等 | 宍粟市 | 千種 | 42 | 波賀 | 11 | へき地1級 | |
| 15 | へき地等 | 丹波篠山市 | 今田 | 50 | 丹南 | 12 | 準へき地 | |
| 16 | へき地等 | 姫路市 | 坊勢 | 53 | 家島 | – | 離島・へき地2級 | |
| 17 | 統合方針 | 相生市 | 矢野川 | 53 | 2027 | 那波 | 7 | 2027統合方針 |
| 18 | 一貫校 | 宍粟市 | 波賀 | 54 | 一宮南 | 7 | 小中一貫・準へき地 | |
| 19 | ★存続 | 朝来市 | 生野 | 56 | 朝来 | 11 | ||
| 20 | 一貫校 | 宍粟市 | 一宮北 | 60 | 一宮南 | 11 | 小中一貫 | |
| 21 | 統合方針 | 養父市 | 大屋 | 61 | 2032 | 養父 | 14 | 準へき地 2032養父中へ統合方針 |
| 22 | 統合方針 | 養父市 | 関宮学園 | 66 | 2032 | 八鹿清渓 | 13 | 準へき地 小中一貫 2032八鹿青渓へ統合方針 |
| 23 | 統合方針 | 豊岡市 | 城崎 | 67 | 2029 | 港 | 4 | 2029港中と統合方針 |
| 24 | 一貫校 | 豊岡市 | 竹野学園 | 67 | 城崎 | 7 | 小中一貫 | |
| 25 | ★存続 | 淡路市 | 岩屋 | 68 | 東浦 | 8 | ||
| 26 | 統合方針 | 姫路市 | 鹿谷 | 75 | 2028 | 置塩 | 6 | 2028目途に周辺小中と一貫校を設置 |
| 27 | 統合方針 | 佐用町 | 上月 | 77 | 佐用 | 9 | 1町1校化を検討 | |
| 28 | 一貫校化方針 | 豊岡市 | 但東 | 77 | 出石 | 12 | 小中一貫化の方針 | |
| 29 | へき地等 | 香美町 | 村岡 | 80 | 小代 | 12 | 準へき地 |
2020年以降に統合した中学校
リストはWikipediaによる。生徒数は原則統合直前の生徒数(兵庫県教育委員会による)。距離は廃止校と統合先の距離。
| No. | 年度 | 自治体 | 廃止校 | 生徒数 | 統合先 | 距離 | 備考 |
| 1 | 2021 | 香美町 | 香住第二 | 34 | 香住第一 | 9 | 生徒数は2019/5 |
| 2 | 2021 | 三木市 | 志染 | 38 | 緑が丘 | 3 | |
| 3 | 2022 | 三木市 | 星陽 | 50 | 三木 | 6 | |
| 4 | 2022 | 南あわじ市 | 倭文 | 3 | 三原 | 6 | |
| 5 | 2022 | 猪名川町 | 六瀬 | 54 | 中谷 | 10 | 清陵中として新設 |
| 6 | 2022 | 市川町 | 鶴居 | 68 | 市川 | 5 | |
| 7 | 2023 | 丹波市 | 和田 | 103 | 山南 | 7 | |
| 8 | 2026 | 多可町 | 中町 | 200 | 多可 | 1 | 新設 |
| 9 | 2026 | 多可町 | 加美 | 137 | 多可 | 7 | 新設 |
| 10 | 2026 | 多可町 | 八千代 | 98 | 多可 | 8 | 新設 |
現在統合協議中の学校
ただし、小規模校以外
| No. | 自治体 | 対象校 | 生徒数 | 統合目途 | 統合先 | 距離 | 備考 |
| 1 | 三田市 | 上野台 | 101 | 2031 | 八景 | 4 | 2校統合による新設 |
| 3 | 西脇市 | 西脇東 | 85 | ? | 西脇 | 5 | 黒田庄中との統合計画だったが変更 |
| 4 | 加西市 | 善防 | 127 | 2028 | (仮)加西統合 | 4 | 3校統合による新設 |
| 5 | 加西市 | 加西 | 211 | 2028 | (仮)加西統合 | 3 | 3校統合による新設 |
| 6 | 加西市 | 泉 | 193 | 2028 | (仮)加西統合 | 6 | 3校統合による新設 |
2020年以降に小中一貫校化した学校
| No. | 自治体 | 中学校 | 生徒数 | 年度 | 小学校 | 備考 |
| 1 | 養父市 | 関宮 | 66 | 2020 | 関宮小 | 関宮学園として一貫化 |
| 2 | 加古川市 | 両荘 | 154 | 2024 | 平荘小ほか | 両荘みらい学園として一貫化 |
| 3 | 豊岡市 | 竹野 | 67 | 2025 | 竹野小 | 竹野学園として一貫化 |
| 4 | 加東市 | 東条 | 173 | 2025 | 東条東小ほか | 東条学園として一貫化 |
| 5 | 加東市 | 社 | 437 | 2025 | 社小ほか | 社学園として一貫化 |
小中一貫校化を協議中の学校
| No. | 自治体 | 中学校 | 生徒数 | 統合目途 | 小学校 | 備考 |
| 1 | 加東市 | 滝野 | 294 | 2028 | 滝野小ほか | 滝野学園として一貫化 |
| 2 | たつの市 | 新宮 | 273 | 2028 | 新宮小ほか | 新宮地域のすべての小中を統合 |
| 3 | 川西市 | 清和台 | 509 | ? | 清和台小ほか | 小学校統合に伴う一貫校化を検討 |